第二話 不本意ながら、人間廃業

「なんということだ……」

 借りた手鏡に映った自分はでっかい顎をカクンと落とし、正に開いた口が塞がらない。
 その塞がらない口には尖った牙がびっしり生えていると思いきや、前の方はやや尖った感じはあるが奥に進むにつれて平べったい臼歯になっている。
 そこに映っているのは真っ赤な恐竜だ。
 黄色というには深みが濃い金色の瞳を真ん丸にぱっちり開き、赤い羽毛で全身を覆われたでっかいトカゲ。
 しかし逞しい二本脚で立つ姿は印象的にトカゲと言うよりもダチョウなんかのでかい鳥に近い。
 頭頂辺りからは鶏冠っぽい羽根が生え揃い、とんでもない派手っぷりだ。このド派手さの前では髪を極彩色に染め上げたパンクロッカーも南米のカーニバルダンサーも霞んじまう。

「羽竜族なんて珍しくもないけど、本当に知らないの?」
「俺の居た所じゃ、恐竜なんて何億年も前に絶滅してらぁ」

 ウリュウゾクがどれくらいポピュラーなのか知らないが、少なくとも地球にはヒトや馬と肩を並べるサイズのトカゲは居ない。服着て喋るなんて論外だ。

「あなたの居た所、ね……。お互いに色々と聞きたい事がたくさんあるみたいだけど段階を踏んで、まずは一番大事な情報から交換しましょう」
「一番大事な情報?」

 鏡から目を外して鸚鵡返しに尋ねると、女は「ええ」と応じながら被っていたフードを降ろす。すると隠されていた黄金色が夕陽に照らされ、目映いばかりに煌めく中に天使の輪がふわりと浮かび上がった。
 横に真っ直ぐ切り揃えられた前髪の下に二つ揃った大きな瞳は鮮血のように紅く、純金の髪も相俟ってまるで宝冠を彩る紅玉のよう。
 そしてそれらの豪奢な色彩を際立たせているのは、健康的なツヤ張りが眩しい剥きたてのゆで卵のような白い肌だ。
 年の頃は十代後半といった所だろうか。ふっくらと柔らかそうな頬はやや細めの顎で小顔を主張し、薄目の唇は大きすぎず小さすぎない絶妙のバランスでそこにある。
 少女の瑞々しさと大人の艶やかさの双方を兼ね備えた未熟の美は、どちらに傾き過ぎても成り立たない奇跡のような調和で魅せていた。
 吊り上がり気味の目尻と太目の眉が醸す勝ち気な視線に射抜かれ、時を忘れて見蕩れてしまった。

「私はトリーシャ・カーレット。見ての通り、真人族よ」

 そう告げられてもしばらくの間、何の反応も出来ないくらいに度肝を抜かれていた。

「ぼーっとしてないで、次はあなたの番」
「わ、悪りぃ。俺は武藤廉太郎、一応は元人間だ」

 困ったような顔で促され、正気に戻った俺は慌てて名乗り返す。
 だって仕方ねえだろ。外国人と接するのはもう珍しく無くなったけどこんだけ掛け値なしの、それも年頃の美少女と顔を合わせる機会なんざ生まれて初めての事なんだから。

「ムトー? 珍しい名前ね」

 桜色の形の良い唇が奏でる声はさっきまで聞いていたものと同じ筈なのに、何故だか鈴が鳴るような軽やかに澄んだ音色に聞こえてくる。
 もう、なんだか色んな意味で蕩けさせられそうな気分が心地良くなってきた。が、それでは会話にならんので、心地良さを惜しみつつも気を引き締めて掛かる。

「それは苗字で、名前は廉太郎だ」
「あら。苗字が前に付くということは……あなた、八雲の出身?」

 ヤクモ? 島根県か? いやいや、なんで外国人が東京やら京都をすっ飛ばして島根を引き合いに出すか。ハワイの人ならともかく。

「多分、違うと思う。日本って国の出身なんだが……分かんねえよなぁ」
「ニホン? ニホン……」

 俺の言葉を反芻するように呟き繰り返すトリーシャ。
 しかし期待は出来ないだろう。ここが地球じゃないことは自身の姿や、最初に見た同族らしい黒い奴の死体から判断出来る。地球じゃなけりゃ、日本なんて聞いたことがなくて当たり前なんだ。
 ……はっ、もしや島根県は独自に異世界と交流していたとか!? その門は出雲大社とか……なんか全くありえない話では無さそうな気がしてくるな。黄泉の国に通じる道があるとかなんとか、って話が残ってたような気がするし。

「あ、ごめんなさい。話の腰を折ってしまったわね」
「別に構わねえよ。俺だって、ここが何処か聞いたって理解出来ねーんだからさ」
「どういうこと?」

 赤い瞳を真っ直ぐに向けてくるトリーシャから一度顔を逸らし、未だ手の内にあった水筒を口元に運んで中身を喉に流し込む。
 渇ききっていた喉に待ち望んだ水分が流れ込み、張り詰めていたものが次々に緩んでいくのを感じた。同時に今まで忘れていた疲れがどっと全身に圧し掛かるように押し寄せ、癒しきれない渇きと共に心身を苛む。
 一息つけようと思ったら、逆にマズったっぽい。

「出勤中にいきなり地面から湧いた紅い光で全身を焼かれて、死んだと思った。だから目が覚めたのもビックリだけどよ、もうワケ分かんねえ事ばっかりで常識って何だ? て感じだよ」

 幸か不幸か、肉体的に疲れ切ったために意外と落ち着いて考えることが出来ている。
 体力が有り余っていれば、パニックに陥って喚いていたんじゃなかろうか。そんであの場に留まって、今頃は干からびていたかもしれない。

「そーいや俺、なんであんな所で目が覚めたんだ?」
「覚えていないの?」
「おう。ついでに言えば、なんでトカゲなのかも分かんねえ」
「そう……それじゃ、商隊を襲った賊も見てないのね」

 呟くとトリーシャは何事かを思案するように俯いた。
 そういえばこの女、どうしてあの場に居たのだろうか。やっていた事も残された荷馬車の物色とコソ泥の所業だ。

「言っておくけど、私はコソ泥でも何でもありませんからね」

 じと、と半開きの目で睨まれてギクリと僅かに身が竦んだ。

「何故バレた」
「そんな顔で黙り込まれたら嫌でも分かるわよ」

 なにこのエスパー、トカゲの表情なんて分かんの? 俺、犬の表情も分かんねーよ。
 羽毛がびっしり生えたでかい顔をごつい手で触って確かめている俺に構わず、トリーシャは言葉を続ける。

「街道を進んでいたら強い光が見えてね。気になって様子を見に行ったら商隊が全滅していたのを見つけたの」
「強い光?」
「ええ。紅い光でね、まるで太陽が落ちてきたみたいな激しい光だった。結構遠くからでも見えたから、他にも見えた人は居るかもしれないわ」
「紅い光……俺を焼き殺したのも、紅い光」
「なんらかの関係があるかもしれないわね。全滅した商隊を見つけた時、あの紅い光が彼らを襲った攻撃だったのかと思ったもの」

 しかし彼女が調べた結果、彼らはもっと早い時間に襲われて殺されていたのだという。
 襲われた商隊の身元が分かるものが残っていないかと車輪が壊れて残された荷馬車を調べていたところ、目を覚ました俺と遭遇したという事らしい。

「身元が分かりそうなものは何か見付かったのか?」
「領主発行の通行証を幾つか見つけた」

 答えたトリーシャは見覚えのある袋から何冊かの冊子を取り出した。
 通行証……なるほど、元の世界で言えばパスポートみたいなもんか。あくまで地球の感覚での話だが、身分証明書としてはうってつけじゃないか。
 そこに記された文字は全く読めないが、お役所発行の堅苦しい雰囲気は何となく感じ取れた気がする。

「結構分厚いな」
「商隊の構成員、全員分だものね。もっと大所帯の商隊になると、確認するのに一日掛かる事もあるそうよ」
「なるほど、そんなのを持ち込まれた役人は気の毒なこったな」
「ふふっ、そうね」

 形の良い唇の口角を僅かに上げ、楽しそうに笑うトリーシャはとんでもなくキレイだ。我を忘れて見蕩れちまっても仕方がない。
 こんなのが日本に居たら、芸能界やらなんやらが黙っちゃいないだろう。
 いや、もしかしたら金持ちの息子なんかがガッチリ囲い込んで、一切外に漏らさないように飼い殺してしまうかもしれないな。
 なんておバカな事を考えている俺に構わず、彼女は冊子の一つをペラペラと捲る。

「ここにある通行証の数は外で倒れていた人数よりも多かった、つまり生き残った人は賊に連れ去られたと見るべきね」
「何のために、て聞くまでもないか……」

 日本ではあまり聞かないが、治安の悪い国では人身売買目的の誘拐はそう珍しい話ではないと聞く。
 それに国内でも未解決の誘拐事件は割と多いし、被害者がアングラな風俗に売り飛ばされていたなんてのもありえない話ではないだろう。

「これらの証拠品を警備兵に渡して、賊の討伐に兵を出して貰わないといけない。早いうちに討伐隊が出発出来れば、痕跡からアジトを割り出せるかもしれないし、連れ去られた人たちも無事に解放されるかもしれない」

 そう呟く彼女は沸騰した鍋に視線を落とし、眉尻を下げている。おそらく、そう事が上手く運ぶのは難しいと予想出来ているからに違いない。
 悪事を働く奴ってのは用心深いものだ。簡単に捕まらない為の手段は二重三重に用意している。
 気の毒な話だが、捕まった商隊の人たちに訪れる未来は限りなく暗い。

「あら? これってあなたのじゃない?」

 冊子をペラペラと捲るトリーシャの指が止まる。
 は? そんなバカな、と思いつつもそのページを覗き込むが、書かれているミミズがのたくったような文字は全く読めなかった。

「わりぃ、全然読めん。なんて書いてあるんだ?」
「名前はミアキス・ルー。種族は羽竜族、生年月日は神王歴2875年1月3日、出身地はアストリアス大公国。
 この通行証を発行した街はエスペリア首長連合国カスハール州都ビルゴ、領主はカスハール州候ブルノ・ロドリゴ・カスハール三世。
 記載されている身体的特徴からみて、あなたに一番近いものだと思うわ」

 年号やら国の名前はさっぱり分からんが、読み上げられた内容からしてますますパスポートっぽい。

「ふむ、全然身に覚えがねえ」
「そう。通行証としては問題無いし、大事に持ってなさいな」

 トリーシャは冊子を留めている紐を解き俺の、というか身体の持ち主のページを外してこちらへ渡してくれた。

「いいのかよ?」
「あるのと無いのとでは全然違うわよ。振れる袖も無いんだし、使えるものは使わなきゃ」

 言われてみればその通りなのだが、どうも釈然としない。
 もし元の持ち主が現れて、なんて事にでもなったら面倒この上ない事態に発展しそうで気が滅入るわ。
 丈夫そうな用紙に読めない文字が書かれたそれを暫しぼーっと見詰めていたが、仕舞える所が無い事に気付きしばらく保管してくれるようトリーシャへ戻す。そして大きく溜息を吐き、雲ひとつ無いが青みがやや薄れ始めた空を見上げた。

「この分だと、今アレコレ聞いてもあまり意味がなさそうだなぁ」
「そんなに軽く考えてしまっていいの?」
「ここまで分からん尽くしなら、もう開き直るしかあるめぇ」

 考えるのが苦手という訳ではないが、考えるための材料があまりにも少な過ぎる。
 下手の考え休むに似たりって諺もあるが、無闇に思い悩んだって時間の無駄って事だ。差し当たって今、やるべき事といえば……。

「とりあえずはしっかり休める所に辿り着く事だぁな。今日一日で色々ありすぎて、もう頭がパンクしそうだ。落ち着いて整理しねえと、これ以上は何を聞いたって頭が受け付けねえよ」

 走り詰めの疲労と緩んだ緊張の反動が織り成す倦怠感が凄まじい正直、もう目を開けているのも限界だ。

「わりぃ、俺ぁもう寝るわ」

 そう告げるが早いか、俺はその場にごろんと転がった。
 服が汚れるとか、もうそんなことを気にする余裕はない。
 瞼が落ちる寸前にトリーシャの呆れ顔が視界に入ったが、次の瞬間には夢の国へと旅立っていた。


 トカゲ姿になって二日目。
 早朝に飲める水を多めに作って水筒に詰め、携行食で簡単に食事を済ませて出発した。
 職業柄、水に気を使うことは多かったが、蛇口を捻れば安全な水が容易く手に入る事が如何に有り難いかを早くも痛感している。
 トリーシャ曰く――。

「早いうちに街道に戻れれば、お昼過ぎには一番近い村に着ける筈」

 ――との事。
 商隊を襲った賊を報せなければならないし、今日もひたすら走れ走れ大会は継続ってことだ。
 それでも昨日のように訳も分からず、延々と走り続けるよりは幾分かは気が楽だ。
 昨日は変化に乏しい礫地ばかりだったのに対し、足元には背の低い草が生い茂っている。ちらほら生えている木も枝を深い緑でいっぱいに繁らせ、瑞々しい姿を誇っていた。
 都市間を結ぶ街道と聞いて東海道なんかの幹線道路のような大きな道を想像していたが、実際には片側一車線程度の、それも舗装すらされていない土道だったと知った時は拍子抜けもいいところだ。
 とはいえそれなりに整地された道は走りやすく、街道に入ってそうしないうちに目的地の村に案外とあっさり辿り着けた。
 村は外周を木の柵でぐるりと囲われ、開かれた丸太組みの門の側で警備をしていたらしい青年に軽く挨拶を交わすと、特に咎められる事もなく中へ入れた。

「なあ、なんかやけに寂しい感じの所だな」

 礫地ばかりに比べれば確かに緑は多いのだけど、村のほとんどは赤土の色が大半を占めている。そのせいか見通しが良過ぎて、人気が非常に少ないのがありありと見て取れてしまう。
 煉瓦造りの小さな家屋がぽつりぽつりと建てられているが、その幾つかは木製の門扉が外れたものもあり人が住んでいるとは思えない。

「ここから南にあった州が何年か前に異教徒に占拠されてから、治安が急激に悪くなったみたいね。住民の多くが北や西に移って行ったそうよ」
「異教徒ねぇ。どんな連中なんだ?」
「詳しくは知らないのだけど、人族至上主義だかを掲げて他種族を一方的に弾圧していると聞くわ」

 宗派だかに頓着しない国民性故か、いまいちピンとこない話だ。
 しかし今の自分の姿を鑑み、ふと湧いた疑問を口にする。

「仮に俺がそいつらに捕まったらどーなるんだ?」
「噂が本当なら、すぐさま殺されるわね」

 ここまで見てきたのが荒野ばかりなせいか、徒党を組んだモヒカン頭の荒くれ者が斧とか火炎放射機を携えて奇声を上げながら迫ってくる光景しか想像できない。
 なんてこった、俺はそんなヒャッハーな世界を生き抜かねばならんのか。今更ながらに不安になってきたぞ……。

「そうすると案外、この村の連中が件の賊だったりしてな」

 不安を紛らわすために寒い軽口が口を吐く。
 と、隣を馬に跨がって歩くトリーシャが軽く目を丸くしてこちらを見ていた。

「どうした?」
「いえ……暢気そうに見えてちゃんと考えていたのね、ちょっと意外だったわ」
「は? 何が?」
「賊の正体。私もあなたと同じ推測を立てていたもの」

 声を抑えた彼女が告げた言葉を呑み込むのには少々時間を要した。

「参考までに、あなたがその仮定に辿り着いた根拠を教えて頂戴」
「い、いや根拠って言われてもなぁ……」

 気紛れに吐いた口出任せなんて答えたら呆れられるよな。
 そうやって言い澱んでいると、不意にトリーシャがクスクスと忍び笑いを始めた。

「ふふっ。ごめんなさい、意地悪をしたわね。でも経緯がどうあれ、そこに考えが至ったのは大事な事よ」
「そ、そうなのか?」
「ええ。危機感は他人に丸投げするものではなくてよ」

 そんなもんか……そりゃあ平穏無事な世に生まれた頃から漬かりきってきた現代日本人の気質じゃ、危機感なんてそうそう尖らせるもんじゃないからなぁ。
 実際、俺が日々の生活で特に注意していた事といえば財布を盗まれない事と仕事中の衛生環境と、通勤時の痴漢冤罪くらいなもんだ。
 しかし何だ。今となっては年齢不詳な見てくれだが、元々の自分からすれば一回り近くも年下であろう少女から諭されるとはね。しかもそれで卑屈な気分になったりしない辺り、奇妙なモンだ。

「じゃあさっさと村を抜けようぜ」
「そうしたいところだけど、簡単には出してくれないみたいね」

 呟くように返答したトリーシャを見、背筋にゾッとするものが駆け抜けていく。
 外套のフードで頭の殆どが隠れているが、僅かに覗いた口元は口角を上げて薄らと笑っているのが見て取れたからだ。
 それを目の当たりにしたからか、さして大きくない筈の彼女の身体から異様な圧迫感が発せられているように思えて息苦しさを覚える。
 乾いた喉に生唾をゴクリと飲み込み、とりあえずトリーシャから視線を外す。と、何気なく視線を向けた先に違和感を覚えた。
 建物と建物の間にある空間に、僅かだけど土煙のようなものが漂ったように見えたのだ。

「気が付いた?」
「ああ……いつからだ?」
「この村に入った時からずっと」

 マジかよ、平和ボケにも程がある。
 意識するとあちこちから監視されているような気がして、心地悪さが悪寒となってじわじわと身を竦ませていくような錯覚に囚われ始めた。

「そういえば、こんな寂れた所でどうやって生計を立てれるかって考えると謎だよな」
「それを村に入る前に考えられれば合格ね。ここまで来る間に見たでしょう?」

 彼女が言わんとしているものは、舗装されていない街道から見えた葡萄畑のことだろう。
 あの時はそういうものか流していたが、今思い返せば棚は崩れ、荒れていたような気がする。
 ならば、と浮かんだ疑問を隣の少女にぶつけてみた。

「分かっていたなら迂回するなり出来たんじゃねーか?」
「そうね。でもあの畑に近付いた時点でその選択肢は消えたわ。無理に迂回しようものなら、先回りされて罠を幾つも張られていたでしょうね」

 この辺りは彼らの庭だもの、と付け加えたトリーシャの声は何故か弾むように軽やかだった。
 とても笑える状況ではない筈なのに、どういう訳かこいつは楽しそうなんだ。

「村の外に回ってもヤバいのは分かったけど、こっちはもっとヤバいんじゃないか?」
「ヤバいわね。一斉に囲めるポイントまで誘導するのも簡単でしょうし、廃屋を丸々罠に仕立てる事だって出来る」

 ネガティブな材料しかない、平和ボケな俺でさえはっきりと分かる詰んだ状態。
 だというのにこの女はくつくつと、とても楽しそうに笑い始めたのだ。
 ああ、なんだこれ。逃げたい、全力で遠くに逃げたい。嫌な予感しかしねぇ。


初稿 2013.03.15
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